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梁における曲げモーメントと断面二次モーメントについて
■曲げモーメントについて
  単純支持はり、左側支点からaの位置に集中荷重Pが作用する場合について説明する。

図1 単純支持、集中荷重の場合
 曲げモーメントMxは、左支点からx離れた断面mn上の点に関するモーメントの値である。厳密にはmn断面の中立軸に関するモーメントの値である。
0≦x≦aのときは、作用する荷重はRA,距離xであるので、mn断面上の点に関するモーメントは、
   Mx=RA・x
となる。
a≦x≦L のときは、荷重はRAとP、RAによるモーメントは前式と同じ、Pによるモーメントは、荷重P,pq断面までの距離(x-a)で、Mx=RA・x-P(x-a)となる。梁を下に凸になるように変形させる曲げモーメントは+、梁を上に凸になるように変形させる曲げモーメントは−と決めている。普通はx座標は左側を0に取る。

図2 0≦x≦aのとき      
       mn断面上に生ずるモーメントMx
図3 a≦x≦L のとき    
           pq断面上に生ずるモーメントMx  



+:はりは下に凸に変形 −:はりは上に凸に変形
図4 曲げモーメントの符号
  梁は変形をしながらも静止しているので、力とモーメントは釣り合っている。外力と外力による曲げモーメントMxと釣り合うための力とモーメントが材料内部に生ずる。これが内力、せん断力と曲げモーメントである。mn断面上で、 RAの力と釣り力は、図2のようにせん断力Vx、RAによるモーメントMxと大きさが等しいモーメントが断面mn上の点に関して生ずる。断面pqに関しても同様である。
 これらは、材料の抵抗としての内力、すなわち、曲げ応力によって生ずるモーメントの総和である。外力による曲げモーメントMxと釣り合うと言うことから、曲げ応力σxの大きさが求まる。
■曲げ応力の算出
  大きめの消しゴムを用いて簡単な実験を行い、曲げによる変形の状態を調べてみる。教科書図6.1(a)のように,ゴムの側面に中心線と格子状に線をあらかじめ引いておく。このゴムを両端支持,モーメントMを加え,変形の様子を調べる。
  縦方向(y方向)の線をみてみると,中央のの線は変化がない。その両側の線は,いずれも中央の方に傾いている。ほぼ直線の状態を保っているとみてよさそうである。横方向(x方向)の線はいずれも下に凸に円弧状に変形している。線の間隔はほぼ同じようであり,同心円の一部であるようなことも予想される。
 以上のことから湾曲しているゴムの内側の横方向の線は変形前より縮んでおり,外側の線は引き伸ばされていることがわかる。また,その伸縮の状態は,伸びも縮みも外表面にいくほど大きくなっている。
 はりが細い繊維から構成されていると考えると,図5のように、凸側の繊維は少し伸び,凹側の繊維は少し縮む。したがって,凸側の繊維は引張りの変形状態にあり,軸方向に引張ひずみの分布が生じていることになる。凹側の繊維は圧縮変形の状態にあり,圧縮ひずみの分布が生じている(図8)。


図5 曲げモーメントによる変形 図6 はりの中立面・中立軸と座標の関係
 前述のように、外力による曲げモーメントMxと釣り合うために材料内部に抵抗が生ずる。これが内力、曲げ応力である。mn断面上で曲げ応力によって生ずるモーメントの総和と曲げモーメントMxと釣り合うと言うことから、曲げ応力σxの大きさが求まる。
 
     
   


図7 微少部分の変形
図8 断面に生ずる力の分布 Mxは外力によるモーメント



図9 曲げ応力
●モーメントは、「 ある物理量と軸からの直線距離との積」との英語の辞書には記載されている。力のモーメントの釣り合いなどの場合は、力の大きさとある点からの力の作用線までの距離との積の和が0と言うことから条件が導かれる。力の釣り合いは、平行移動しない、モーメントの釣り合いは回転しない事を意味し、この2つの条件が成立して、釣り合うことになる(教科書第5章COLUMN参照のこと)。力のモーメントは、一般に、ある軸の周りに物体を回転させる効果の大きさとして解釈されている。梁の場合の曲げモーメントも、断面の中立軸を軸として材料を回転させる(曲げる)作用をする。
■図心の計算 幅b、高さhの長方形断面の場合
     
  
図10  幅b、高さhの長方形断面の場合 
                    
■断面二次モーメントの計算 幅b、高さhの長方形断面の場合
     

                      図11 幅b、高さhの長方形断面の場合                   
 
*断面二次モーメント
 曲げ応力によって生ずるモーメントの総和を求めるとき、中立軸からの距離y,微少面積daとして、∫y^2dAが入ってくる。この値は、梁の断面積の形状と寸法で決まり、これが、断面二次モーメントである。断面積×(yの自乗)、断面積×距離の二乗が断面二次モーメントの名称の意味である。重心の位置を求めるとき、∫ydAが入るが、この場合は断面一次モーメントである。 材料力学の曲げ応力を導く章をご覧になれば導入の細かい数式が書かれている。
*文中の教科書は、小山、鈴木著、「はじめての材料力学」、森北出版
*応力の物理的な意味について http://ms-laboratory.jp/zai/stress/stress.htm

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