ホタテ貝殻の機能性

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貝殻工場,クリックで拡大       貝殻工場,クリックで拡大
青森県平内町 貝殻工場
 
人間の健康と安全の確保
 シックハウス症候群,MRSA,水虫,食中毒,有害化学物質の代用等
循環型社会の達成と廃棄物の資源化
 
 ホタテ貝は年間約52万トン(東京ドームの半分に相当する量)が東北、北海道で産出され、これに伴い、年間約21〜25万トンの貝殻が廃棄されています。青森県においても、むつ湾におけるホタテ貝養殖に伴い年間約5万トンものホタテ貝殻が大量に廃棄されています。5万トンのうち、試験的な利用も含めて1万トンが有効利用されているだけです。有効利用の大半は、公共事業における造成埋め立ての利用です。青森県だけでもおよそ70万トンのホタテ貝殻が累積していると推定されています。これらの処理の問題が生じています。 平成6年から、廃棄されているホタテ貝殻を有効利用するため、長年の進化の過程で得た合理的な貝殻の構造とその機能性を工学的に応用する目的で研究を行ってきました。
 
 研究の結果、ホタテ貝殻の有する機能性は、多様で、驚異的なものであることがわかってきました。平成11年より(株)チャフローズコーポレーション(http://www.chafflose.net/)と産学共同研究をスタートしました。シックハウス症候群、カビなどによる室内汚染等は世界的な規模で社会問題化しており、解決が急務であることから、本研究の成果は、これらの環境問題の解決と健康の確保を化学物質をいっさい用いず達成できる可能性を有すると言うことと、21世紀に要求される循環型の社会の構築、さらに、ゼロエミッションの視点において、国内ばかりでなく、諸外国の多くの人から期待されています。
 
 ホタテの貝殻を粉砕し、種々の高温度で,特殊な方法で焼成した粉末がホタテ貝殻セラミックスです。単純に高温で焼成しても多様な機能は発揮されず、この高度な焼成技術が特許となっています。このセラミックスは、有害な化学物質の分解・軽減、抗菌、消臭、防虫などの機能を有しています。その他、未発表で研究中の機能を考えますと、すばらしい素材であり、この機能を応用した製品の開発は多種多様な分野に及びます。材料学的に、一つの材料がこのように多機能を有することは、まれなことです。自然素材で、人体に無害であること、材料自体、環境問題を引き起こさないのも魅力です。
 
 地球的な規模の環境汚染が問題になっており、私たちの経済活動においても、廃棄物を出さないゼロエミッションシステムが必要とされ、廃棄物の有効利用が要求されています。紙やペットボトルなどの再利用の場合をみてもわかるように、最初の純正品よりも性能上よいものができないのが一般的です。貝殻の場合は、価値のない廃棄物を、高性能、多機能な製品に仕上げることが可能となり、資源とすることができます。また、貝は海中に溶けた二酸化炭素を炭素源として炭酸カルシウム(約44%は二酸化炭素に相当)を生成しますので、ホタテ貝を養殖することが地球温暖化対策に役立ちます。
 
 研究室では、その他の機能に関する実験、いろいろな機能のメカニズムに関する研究、機能を応用した製品の実用化のための技術開発を行っています。 
研究経緯について    

ホタテ貝殻の驚異のパワー
ホタテ貝殻セラミックスの化学物質軽減・分解機能


 ホタテ貝殻を主成分とする壁材(チャフウォール)は、ホルムアルデヒドやVOCなどの有害化学物質軽減機能を有しています。この壁材は、未焼成のホタテ貝殻微粉末、焼成したホタテ貝殻セラミックスと天然の接着剤を使用しており、化学物質の放散はいっさいありません。また、抗菌、消臭機能を有し、耐火性は勿論、吸放湿性にも優れています。ホルムアルデヒドについて実験で、分解している結果を得ています。最近の研究結果では、ホタテ貝殻セラミックスが触媒として作用し、ホルムアルデヒドを分解していることがわかってきました。
  

 約114リットルの容器内のホルムアルデヒド濃度を約1ppmに調整し、この壁材を塗布した試料(420mm×300mm)を5枚入れた後のホルムアルデヒド濃度は、10分後、ほぼ0.2ppmに減少しました。この機能を応用し壁材「チャフウォール」の他、セラミックスをすき込んだ和紙製品も開発しています。        


ホルムアルデヒド濃度変化曲線


 ホタテ貝殻セラミックスは、化学物質を分解する機能があり、その他のプラスチックを分解する可能性もあり、この廃棄処理にも使えそうです。

ウレタンスポンジの分解

27日後の分解の様子

ホタテ貝殻セラミックスの二酸化炭素軽減効果

 ホタテ貝殻セラミックス粉末とホタテ貝殻未焼成粉末にチャフウォールで使用しているバインダー(酢酸セルロース14%)を加え、ガラス板(100mm×200mm)の両面に二度塗り、グローブボックス内に、あらかじめ密閉したホタテ貝殻未焼成粉末、ホタテ貝殻セラミックスの試料を入れ、グローブボックス内のCO2濃度を2000ppmに調整します。濃度調整後、試料を開封して実験を開始し、設定した時間毎にCO2濃度を計測した結果を図に示します。
 ホタテ貝殻焼成時に主成分である炭酸カルシウムが二酸化炭素を放出して酸化カルシウムになります。酸化カルシウムの一部は空気中の湿分と反応して水酸化カルシウムに変化します。酸化カルシウムと水酸化カルシウムは空気中に放置すると、二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムに戻ります。三ヶ月間の実験の結果から、約7年間は軽減効果が持続すると推定しています。
 「チャフウォール」で施工した部屋の空気が「森林のようになる」と感じている方が多いのは、この効果によるものと考えています。
 この効果を積極的に応用した製品を開発中です。


二酸化炭素軽減効果
 

ホタテ貝殻セラミックス水溶液の除農薬機能
 
 ホタテ貝殻セラミックス水溶液に野菜を漬けたとき、残留農薬を除去することができる。下記の表は、リンゴ、キュウリ、ブロッコリーについて、残留農薬を取り除くために、つけ込み時間だけ、ホタテセラミックス水溶液中に漬けて、その後、残留する農薬の濃度を測定した結果である。いずれも残留農薬濃度は、つけ込み後、減少している。つけ込み時間"処理ナシ"は、つけ込む前の残留農薬の濃度で、ホタテ貝殻セラミックス水溶液による洗浄処理しておりません。日本の農薬は、付着剤を使用しないので、初期状態でも、残留農薬の濃度は少ない。
 このようにホタテ貝殻セラミックス水溶液の製品「チャフクリーン」等で洗浄することにより、残留農薬の除去も可能です。
 


ホタテ貝殻セラミックス水溶液の抗菌機能


 ホタテ貝殻セラミックス水溶液は、強力な抗菌機能を有することが研究の結果明らかになりました。ホタテ貝殻セラミックスは、最大0.15%程度水に溶解します。実験は0.5%の水溶液を使用しています。,pH12.5の強アルカリです。肌への刺激は強アルカリにもかかわらず、蒸留水以下であることが米国での14日間の刺激性試験で証明されました。製品は、経年変化に対して安全なように、実験で用いた0.5%の水溶液より濃度を高くしています。従って、0.5%以上の濃度ですので製品による機能の差は有りません。実験では密封状態では2年間は、機能性の変化はないことを確認しています。水虫治療薬は1%の水溶液で濾過しておりません。  
 研究室では、下記の菌に対するホタテ貝殻セラミックスの抗菌性を確認しています。
 開発製品 靴の消臭・菌除菌【爽貝水】、除菌・消臭剤【チャフクリーン】、水虫治療薬【MOIYA】

 
ホタテ貝殻セラミックス水溶液(pH12.5程度)の刺激性について
 特許第4366672号「洗浄剤」におけるホタテ貝殻を焼成して得られた酸化カルシウムを水に溶かし、得られた水酸化カルシウム水溶液は、強アルカリ性(pH=12.5)です。ホタテ貝殻セラミックス水溶液(pH12.5)は、人間の肌に対する刺激性は蒸留水以下であることを米国における刺激性試験で確認しています。これは米国における水虫治療薬の臨床試験に先立って30人の治験患者に対して実施された2週間の刺激性テストです。そのための製造方法も確立しています。
 特許「洗浄剤」においては、ホタテ貝殻を含む二枚貝を原料して、残留農薬の除去等の洗浄効果と細菌には抗菌効果があり、人体には害のない酸化カルシウムおよび水酸化カルシウム水溶液を得たことが発明の最も重要な部分です。

*米国における茂派生試験
  14-DAY CUMULATIVE IRRITATION STUDY,Conducted by FACS Institude,Ltd(2004.11.3)

供 試 菌 開発製品
 大腸菌  キッチン用除菌・消臭剤「チャフクリーン」
 爽貝水(そうかいすい)
 黄色ブドウ球菌
 サルモネラ菌
 虫歯菌  開発中:歯ブラシ,うがい薬歯磨き粉
 歯周病菌
 水虫菌  水虫治療薬,靴の消臭と靴の除菌「爽貝水(毎日満足)」
 MRSA  洗浄剤,薬品開発中
 セレウス菌
 緑膿菌  チャフクリーン,爽貝水(そうかいすい)
 ピロリ菌  薬品の開発を検討

最近の話題 歯周病菌 全身に影響?

ホタテ貝殻セラミックス水溶液の抗菌試験結果
   
生菌率(%)


 
 その後、上記の実験結果よりも速効性のあるホタテ貝殻セラミックス水溶液を開発しました。白癬菌などは10分間でほぼ生菌率0%,MRSAは1分程度で0にします。



     大腸菌の場合

 大腸菌に対する抗菌機能を調べるために、大腸菌培養液にホタテ貝殻焼成微粉末水溶液を加えて生菌率を測定しました。この水溶液を加えると、1分以内で生存率がほぼ0となり、強い抗菌作用を示します。また、pH7の中和した場合も即効性は劣るものの抗菌機能を確認しています。

  
           大腸菌の生菌率


 この強い抗菌機能を応用した、たまご、野菜や台所用品の洗浄剤【チャフクリーン】、靴の消臭・水虫菌除菌【爽貝水】、不織布とセラミックス組み合わせた【インソール】等を実用化しています。

ホタテ貝殻セラミックス

ホタテ貝殻セラミックスの
電子顕微鏡写真


 
抗菌試験における大腸菌の様相 いずれも処理時間1時間(菌と試験液が接触していた時間)
 
   

大腸菌の電子顕微鏡写真  (1μm=0.001mm)
生理食塩水の場合 pH12.4のNaOH水溶液の場合 

菌が正常生育したもの

菌は,溶解し一部が残っている
pH12.4のホタテ貝殻セラミックス水溶液の場合 

 ホタテ貝殻セラミックス水溶液の場合は菌は溶菌せず,菌にピットが観察され,また,細胞の変形や収縮した様相が観察される。このことから菌が局部的にアタックされ,細胞内物質が漏出したものと考えられる。             
  


ホタテ貝殻セラミックスの抗菌機能(水虫菌)


 水虫菌に対する抗菌結果から、現在、国内と米国で臨床試験中。第三ステージに入り、2005年10月には終了し、市販薬「MOIYA」製品化し,米国,カナダ,メキシコで発売される。また、靴の消臭・菌除菌【爽貝水】、除菌・消臭剤【チャフクリーン】を実用化しています。また、最近ホタテ貝殻セラミックスとパルプ繊維の不織布を組み合わせた、消臭、ムレ防止の【インソール】を実用化。
 

 水虫菌については、日本人の多くが持つ,Arthroderma vanbreuseghemii, Arthroderma benhamiaeの2種類について実験したところ、ホタテ貝殻セラミックス水溶液を加えた場合は、生えません。写真1は、ホタテ貝殻セラミックス水溶液無添加の場合で上から、

写真1 ホタテ貝殻セラミックス添加無し

@Arthroderma vanbreuseghemii(水虫菌),
AArthroderma benhamiae
(水虫菌) ,
BSaccharomyces cerevisiae
(酵母菌)で、写真2はホタテ貝殻セラミックス水溶液添加の場合で、酵母菌には影響が無く、ひょっとしたら、善玉菌には効かないのかも(?)との期待ができます

  写真2 ホタテ貝殻セラミックス添加


ホタテ貝殻セラミックスの抗菌機能(MRSA)

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAに対して医学界は白旗を揚げた(読売新聞、2001.7.4)。これ以上抗生物質に対して強い菌を作らないことで、今のところ対応策はありません。このようなメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAに対してホタテ貝殻セラミックスは抗菌効果を持ちます。病院における院内感染防止対策製品や医薬品として応用できそうです。
 

MRSA 生理食塩水

生理食塩水

MRSAホタテ貝殻セラミックス

ホタテ貝殻セラミックス添加


メキシコの大学の研究所にて、ホタテ貝殻セラミックスが優れた抗菌剤であることを確認
 
 下記の表に示す菌に対して抗菌試験を実施した結果、銀系、塩素系の抗菌剤と比較して、ホタテ貝殻セラミックス水溶液は、すべての菌に対して抗菌作用があり、優れていることが実証されました。
 
 菌の種類  日本名等
1 Staphylococcus Aureus 黄色ブドウ球菌
2 Escherichia Coli 大腸菌
3 Salmonella Enteritidis サルモネラ属菌、腸炎菌。敗血症の腸チフス様疾患
4 Citrobacter Rodentium 腸内細菌科のグラム陰性桿菌の一属
5 Citrobacter Amalonaticus 腸内細菌科のグラム陰性桿菌の一属
6 Citrobacter Youngae 腸内細菌科のグラム陰性桿菌の一属
7 Enterobacter Cloacae グラム陰性通性嫌気性桿菌。腸内細菌科でクレブジェラ族の一属。骨髄炎、化膿性関節炎を起こす。

「ホタテ貝殻に関する」産学共同研究論文等リスト

1. 小山、北川、鈴木、伊達「貝殻の構造と変形挙動」、日本機械学会平成7年度材料力学部門講演会講演論文集,Vol.A, 1995.8.
2. 小山信次「貝殻の構造と変形挙動」, 八戸工業大学紀要,第15巻,pp.139-143(1996.2).
3. 小山信次産学共同研究中間報告書「ホタテ貝殻のパワー  ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」、平成12年12月.
4. 小山,奥田,福原,小比類巻,笹谷八戸工業大学食品工学研究所紀要,「ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」,第12巻,p.1(2001.2).
5. 小山,小比類巻,奥田他化学学会東北地方大会講演会,「ホタテ貝殻セラミックスによるホルムアルデビドの除去効果」(2001.9).
6. 小山,奥田,笹谷「ホタテ貝殻の有効利用」に関する産学協同研究成果中間発表,青森県庁記者クラブ,2001.11.1.
7. 小山,小比類,奥田,吉田他,「ホタテ貝殻セラミックスによるホルムアルデヒドの除去効果」,化学系7学協会連合東北地方大会,2001.9.
8. 笹谷,小山,「『研究開発型』ベンチャーの要件」,日本ベンチャー学会講演会,2001.11.
9. 吉田,小比類巻,小山,奥田,笹谷「ホタテ貝殻セラミックス壁材の室内環境中におけるホルムアルデヒド除去効果」,日本化学学会第81春季年会,講演予稿集, p. 613(2002.3).
10. 吉田,小比類巻,小山,奥田,福原,笹谷「ホタテ貝殻セラミックス壁材の室内環境中におけるホルムアルデヒド除去反応」,日本化学学会第82秋季年会,講演予稿集,p.50(2002.9).
11. T.Yoshida, W.Urai, T.Takahashi, S.Okuda, T.Kohiruimaki, 「Antibacterial functions of scallop shell ceramics(SCC)」, 化学系7学協会連合東北地方大会・東北地区化学教育研究協議会講演予稿集,p.14, (2002.10).
12. 笹谷廣治,小山信次,「21世紀に求められる研究開発型ベンチャーの役割」, 日本ベンチャー学会誌,No.3(200 2).
13. 小山信次, 奥田慎一, 笹谷廣治, 未来材料,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性とその実用化」,第2巻4号,p.43- 51(2002).
14. 奥田、小山、笹谷、福原、小比類巻,TOBIN,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性とその実用化」, No.20(2002).
15. 吉田,小山,奥田,笹谷,福原,小比類巻,八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要「ホタテ貝殻セラミックスのホルムアルデヒド軽減機能について」,第1巻,p.113-116(2003).
16. 吉田,小山,奥田,笹谷,福原,小比類巻八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要「ホタテ貝殻セラミックスの抗菌機能について」,第1巻,p.117-120(2003).
17. N. KOYAMA, K. SASAYA, T. YOSHIDA, C. FUKUHARA, T. KOHIRUIMAKI, S. OKUDA「Bionic Design of the Scallop Shell --- Development of New Products Applying Its Functions」, 'Recent Research Developments in Material Science ' , RESENT SIGNPOST (2003).
18. 小山、笹谷、吉田, コンバーテック、「ホタテ貝殻の有効利用に関する研究開発」, Vol.368(2003).
19. 小山信次、奥田愼一、他9企業,ホタテ貝殻の有効利用に関する研究開発,平成14年度ほたて貝殻フォーラム、青森県(2003).
20. 吉田,白井,小比類巻,小山,奥田,「ホタテ貝殻セラミックスのホルムアルデヒド軽減機構」, 化学系9学協会連合東北地方大会,(2003.10).
21. 吉田朋央、小比類巻孝幸、小山信次、奥田愼一, 「AHMT 法によるホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減性能評価」,平成16年度化学系学協会東北地方大会予稿集 p. 259(2004.9).
22. 武石健、佐藤浩、奥田愼一、小山信次,「セレウス菌に対するホタテ貝殻セラミックスの抗菌効果」, 平成16年度化学系学協会東北地方大会予稿集 p. 264(2004).
23. 小山信次, 「ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」 TV,新聞記事等ファイル, 産学共同研究中間報告書, Vol 2(2004).
24. T.YOSHIDA, N.KOYAMA, K.SASAYA, T.KOHIRUIMAKI, S.OKUDA, 「A conversion and an application of an Industrial Waste,Scallop Shells,Yielded by an Aquaculture to Multifunctional Resources. Such as a Novel Remedy and a Wallmaterial」 , 12th International Biotechnology Symposium and Exhibition in Republic of Chile(2004.1).
25. 吉田朋央、小山信次、奥田愼一, 「ホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減効果に及ぼす焼成温度の影響」, 化学系協会東北大会(2005).
26. 小山信次,農林水産ジャーナル「ホタテ貝殻を有効利用した新しい機能性材料の開発と実用化」,28 (6) 2005.
27. 小山信次, 「ホタテ貝殻を有効利用した新しい機能性材料の開発と実用化」,農林水産研究ジャーナル,28 (6),p.38-42(2005).
28. 小山信次,浦井航,「ホタテ貝殻セラミックス」,高分子, 55巻,7月号(2006).
29. 吉田朋央,小山信次,奥田愼一「ホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減効果に及ばす焼成温度の影響」, 化学系学協会東北大会,(2005.9).
30. 小山信次,浦井航, 吉田朋央,笹谷廣治,「ホタテ貝殻セラミックスの機能を応用した製品開発」,"ファイバー" バイオミメティックス,NTS, p.287-290(2006).
31. 吉田朋央,小山信次,奥田愼一,「ホタテ貝殻によるホルムアルデヒド軽減機構」,日本化学会第86春季年会(2006.3).
32. 小山信次, 「ホタテ貝殻の有効利用について」, 生活と環境,Vol.6, No.11, p. 17-21(2006).
33. 小山信次,吉田朋央,浦井航,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品開発」,工業材料, Vol.55, No.3, p.81-83(2007).
34. 小山信次,「産学官共同研究−ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品開発」,財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団紀要,Vol. 11, p.9-12(2007).
35. 小山信次、ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品の開発、粉体と工業、VOL 40, NO.1(2008).

 壁材「チャフウォール」について

 大学の研究室を壁材・チャフウォールで施工しました。この部屋に入った方の感想は、「森林の空気と同じ感じ」、「全く臭いがしない」、「気分が落ち着く」とのことです。"素晴らしい感じ"は体験しないと分かりません。

 この壁材で施工した家の方にお聞きしますと、前の晩の焼き肉の臭い、たばこの臭い等は、朝起きた時、全く感じないとのことです。フジテレビ(2002.11.12)で放送されましたように、チャフウォールで施工した方の子どもさんのアトピーが治ってしまったそうです。また、吸放湿性がよく、夏や梅雨時のじめじめ感がなく、冬は暖かく快適です。横浜市内の病院の施工例では、病院特有な臭いはほとんど消えたとのことです。

 チャフウォールは粉末で、水を加えてかき混ぜてローラーや刷毛で塗布します。日曜大工的に素人でも簡単に塗布できます。柔軟性のある材料で、ビニールクロスは勿論、ほとんどの既存の壁材の上に塗布できます。塗りむらもできませんし、臭いもしません。塗装用具はDIY店で購入できます。塗装方法などの要領は(株)チャフローズコーポレーションのホームページ(http://www.chafflose.net/)でご覧下さい。
 
チャフウォール等の開発製品の詳細はこちら

 チャフウォールで施工   壁材の表面の電子顕微鏡写真

  チャフウォールで施工         壁材の表面の電子顕微鏡写真×2000


ホタテ貝殻のバイオニックデザインの考え方


 現在、社会全体におけるあらゆる経済活動、特に、産業における製造プロセスに関わる種々の活動において、自然界が誕生以来行ってきた食物連鎖、すなわち、永遠に持続可能なサイクルを見習って、自然環境や天然資源に与える環境負荷を最小限に抑える基本的な姿勢(国連大学高等研究所提案)が要求されています。
 21世紀、天然資源を完全に活用、再利用することで、大気、水、土壌に廃棄物をいっさい残さない、ゼロエミッションを推進することが必要です。
 バイオニックデザインの概念は、生体の誕生、生育、組成、構造、成分、消滅のメカニズムの解明とその研究結果から得られたヒントを人工物の設計に応用する技術です。
 金属や半導体などの製造の場合、純度や温度を厳密に制御して作りますが、生物の場合は、限られた元素と温度の下で作られ、材料学的には、生物の構成材料は常識では考えられない優秀な材料です。生物の構造・組織・生態を学ぶことにより、生態系に適応する新しい材料の開発、新しい機能を持った人工材料の開発に応用しようとする考え方です。

バイオニック・デザイン的に見たホタテ貝の特徴

 ホタテの貝殻は、もろい炭酸カルシュウム99%と有機質1%からなり(構造部によって割合は異なる)、極めて高い強靱性(プラスチックと同程度)を有し、優れた複合材料です。天敵であるヒトデ等から身を守るため、貝柱で閉じ、靱帯(蝶番の部分)で開き、二枚の貝殻を激しく開閉することによりジェットを噴射し泳ぎます。そのため貝殻は薄く、軽量かつ強靱にできています。靱帯の部分はゴム状の物質に炭酸カルシウムの結晶が分散した分散型複合材料です。


 貝殻は外骨格で、貝の骨の一部です。海中に溶けた二酸化炭素を炭素源として、また、海中のカルシウムから炭酸カルシウムを形成します。貝殻の44%は二酸化炭素に相当しますので、単純に考えると、52万トンの養殖は年間15万トンの二酸化炭素を軽減していることになります。この貝殻を高温で,特殊な方法で焼くと多機能な材料に変身することになります。
 青森県においては、むつ湾におけるホタテ貝養殖に伴い年間約5万トンものホタテ貝殻が大量に廃棄されており、これらの処理の問題が生じています。ホタテ貝養殖は日本固有の漁業であり、プランクトンを餌とするため低コストの養殖であることから、益々盛んになると推定されます。貝殻は廃棄物として問題化しており、この未利用の廃棄物を資源化することが可能になりつつあります。このことにより、地域産業の振興と雇用の拡大に寄与できます。

ホタテ貝殻の結晶

ホタテ貝殻の結晶 約2000倍
貝殻の構造に関する情報は下記で

ホタテ貝殻の構造


貝類の二酸化炭素固定について
   
地球の誕生と環境の形成
 
 約45億年前,地球はマグマオーシャンとして誕生し,原始地球が形成された。マグマとH2,Heの一次大気であり,高温の二次大気中の存在量の割合は,水蒸気 163、炭酸ガス20、塩酸3.3 窒素、水素等 各0.5,酸素0であった。
 
 約38億年前,原始海洋と大陸が形成された。地球の温度は200℃まで低下し,→水蒸気が凝縮,酸性の雨が降った。太陽からの適切な距離、海水の蒸発が抑えられた。水の蒸発・凝縮・流動の過程を繰り返し,雨は大量の土壌を海洋に運んだ。Na,K,Ca,Mg,Al,Fe等の元素が溶け,海水を中和した。大気中のCO2が海水中に溶け、Ca,Mgと反応し、大気中のCO2は減少した。温室効果が消え、地球の温度が一層低下し,安定した環境が作られた。

 海水中に生命が誕生した。熱エネルギーを利用して、硫化水素のような無機物をエネルギー源、二酸化炭素を炭素源とする原始的なバクテリアである。太陽エネルギーを利用して光合成による生物(藍藻類)は二酸化炭素と水と太陽光により生体をつくり, 酸素を放出した。
 
 約4億年前,大気中の酸素量が現在の1/10程度であったが,オゾン層O3の形成により紫外線による生物のDNAの破壊が無くなり,動植物が上陸し,陸生植物の光合成により酸素がますます増加した。植物は太陽エネルギーを吸収して,H2OとCO2から種々の有機物を生産し増殖し,動物は、植物を利用して生存、生物の一部は埋没して、太陽エネルギーを石炭・石油に姿を変えて蓄えた。
 
 サンゴ,貝などはCO2とCa2+から石灰石の殻を作り石灰岩としてCO2を固定し,原始大気で97%であったCO2が,現在の0.03%まで低下し、この濃度で定常状態を保ってきた。大気中のCO2濃度が0.03%の時点で、固定を停止し、酸素21%になって安定した。このような大気状態で安定し、これ以外の大気の割合では人間の出現は考えられないとされている。数百万前,人類が誕生した。

 
生命・環境複合体(ガイア)
 
●環境(大気圏、水圏、岩石圏)と生物圏は切り離すことができない一つのシステム
●自己調節機能、内外の影響緩和機能、恒常性の維持機能を有する持続的システム
 
 
このように,30数億年かけて,地球は自己調節機能、内外の影響緩和機能、恒常性の維持機能を有する持続的システムを手に入れてきた。産業革命以来、大量生産、大量消費、大量廃棄により地球環境を破壊してきた。宇宙の時間感覚からすれば,ほんの一瞬で破壊しようとしている。人間の経済活動が地球環境のガンになりつつあり,地球が瀕死の状態であることの認識が必要である。環境(大気圏、水圏、岩石圏)と生物圏の持続的システムを破壊しているのである
  
貝類の二酸化炭素固定について
 
 大気中の二酸化炭素と海中の二酸化炭素は,図のように平衡状態を保ってきた。現在はこの平衡状態が崩れようとしている。海中に溶けた二酸化炭素を吸収して光合成を行う植物性プランクトンを餌として、炭素、水素、酸素等の元素を取り込み、貝は成長する。貝の母体から貝殻形成のためのコロイド状の母液が分泌されることにより貝殻は成長する。母液は、糖タンパク複合体であり、海水から取り込んだCa2+と貝の細胞の呼吸代謝から生ずる二酸化炭素が炭酸となり、さらにイオンとなったCO3--と結合し、炭酸カルシュウムCaCO3となり沈着する1)。炭素源は海に解けた二酸化炭素を取り込む植物性プランクトンから供給される。単純計算すると、貝殻の44%は二酸化炭素を固定しており、ホタテ貝を養殖することにより二酸化炭素の固定に貢献する。
 
現在,貝,サンゴ等の海中生物の二酸化炭素固定のメカニズムの詳細が研究されている。
 
25万トンの貝殻は約11万トンの二酸化炭素を固定する。杉の木1本は、年間14kgの二酸化炭素を吸収すると言われている。25万トンの貝殻は約8百万本の杉の木と同量の二酸化炭素を固定するので、貝殻の二酸化炭素の固定は効率がよい。
 
 参考文献
 1) 中原 皓: "貝殻の石灰化", 表面科学、Vol.5, No.3, pp.184-188(1944). 

海の生物の炭素等の移動
    
光合成
 6CO2 + 6H2O → C6H12O6 + 6O2  C6H12O6:グルコース
 
ホタテ貝殻焼成粉末に水を加えただけの自然素材100%の製品
水虫治療薬「MOIYA」 靴の白癬菌除菌・消臭剤 除菌・消臭剤

水虫はモーイヤッ
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