材料の強度と破壊>Eガラス繊維の酸環境下における腐食特性

Eガラス繊維の酸環境下における腐食特性
1.はじめに
 
 食品工場で酸性食品が通るGFRP複合材料のパイプやタンクの破損事故が報告されて、酸環境での複合材料の挙動が問題になっている。
 ここでは、酸環境中で一定負荷を受けるガラス繊維の腐食の様相をSEM観察した。

2.実験方法
 
 ガラス繊維は直径13μmのEガラスで図に示す腐食槽を用い、3.5%HCl水溶液中での腐食試験を行った。ガラス繊維に40MPaの負荷を与えたものと無負荷の場合について行った。腐食時間は、24、48、72,96時間である。腐食実験後、ガラス繊維の腐食の様相をSEM観察した。
 

 図1 実験装置
3.実験結果
 
 無負荷の状態の腐食状態のSEM写真を図2に示す。腐食の様相は前報の結果と同様である。ノズルから出たガラス繊維、フィラメント(3〜24μm)は、図3のように収束器をを通して、用途に応じて40〜4000本のフィラメントをまとめてストランドにし、これを束ねてケーキにし、製品となる。この紡糸過程でガラス繊維にはねじりが作用し、これが残留応力となり、螺旋状のき裂が生ずると推定している。
 
(a) 24時間後 (b) 48時間後
(c) 72時間後 (d) 96時間後
図2 無負荷の場合
 

 
図3 ガラス繊維の紡糸機構
 40MPa負荷の場合の腐食の様相は様々であった。無負荷の場合に観察された螺旋状のき裂は観察されなかった。図4は40MPa負荷の場合で、24時間後、軸方向に縦割れの表面き裂が観察され、48,72時間後更にガラス繊維の腐食はすすみ細くなった。96時間後、繊維の一部が欠落した。データが少ないため、腐食の様相をまとめることができなかった。無負荷の時生じた螺旋状のき裂は繊維表面に生じなかったのは確かである。
 
(a) 24時間後 (b) 48時間後
(c) 72時間後 (d) 96時間後
図4 40MPa負荷の場合
*この実験は、八戸工業大学エネルギー工学科、鈴木隆幸、千田美樹、菅野一洋君の平成12年度卒業論文の一部です。


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