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金田明彦氏の「時空を超えた音楽再現」
 
 1980年代、オーディオ誌の「無線と実験」を読んでいて,金田式DCアンプを知った。電子回路に関する知識はほとんど無かったが、同誌に載っている他の設計者の回路図と比較すると部品数が異常に少ないことが目に付いた。特にコンデンサーが少なかった。DCアンプの評判も良かったが、これなら自分でも製作できると思い、最初、バッテリードライブのプリメインアンプを製作した。出てきた音は金田氏が記事で書いている通りのものであった。当時はJBLD130のバックロードホーンと075を7000Hzのネットワークで聴いていた。
 
 製作過程で、良い音を出すための部品の方向性や半田付けの方法、最適な半田ごてなどの発見は、金田氏の実験の結果の結論であると金田氏は言っている。
 半田ごてについては、国産のものは、半田を溶かすときコテの温度低下が著しく安定しない。ANTEXの25W形が最適でコテの形状と重心位置が最良の半田付けをするには必要であるとしている。信号ケーブルや電源コードには情報を正確に伝達する方向がある。導線が作られる過程で熱間圧延などで引き延ばされ結晶の並び方に差が出る、すなわち方向性、異方性が出るとしている。これが音にも影響すると指摘している。材料の研究で結晶の変形を観察しているので理解しやすかった。すべての説明が説得力があり、納得できるものでした。次の図はダイエイ電線とMOGAMI 2497,2511の方向性で、線材に記載されているマークで方向を決めている。ダイエイ電線の場合はDAIEI のマークの D を電源や信号源側(ホット側)にする。
 


ダイエイ電線

 
 また、同様に抵抗、コンデンサー等のパーツも方向性を持っているとしている。上の図でΔはホット側である。また、接点を最小限にするため、私はパワーアンプ基板からダイエイ電線30芯で引き出し、スピーカーに半田付けし、直結している。
進工業抵抗 双信SEコンデンサー 双信V2Aコンデンサー スケルトン抵抗
抵抗とコンデンサーの向き Δはホット側
 
 基板の配線材は、MOGAMI 2497の芯線から7本取りだし、これを撚って作る。断面が図のようになり理想的な形状の円に近くなる。撚り線の作り方も詳細に解説されている。
7本撚り線の断面形状
■7本撚り線の作り方 金田明彦著、「時空を超えた音楽再現 オーディオDCアンプシステム(上巻)」より
 「普通のプリント基板は薄い銅箔で回路を作る.信号は導体の表面しか流れない.薄い板状のパターンは表面積が小さいだけでなく,断面の形状が円とはほど遠いので局部的電流集中が起る.導体抵抗やインダクタンスが大きく,信号が通りにくい.これでは音が悪くなる. DCアンプの基板のパターンは,パーツのリード線が通る孔の開いた丸型パターンだけだ.パターンはパーツの固定にだけ使う.パターン間は,2497の素線(0.18mmφ)を7本手然りにして配線する.たとえ隣同志の短かい距離でも全て7本撚り線を使う.
 7本撚り線は断面が上の図のように円に近い.1本増えても1本減っても断面は非対称になる.信号ケーブルには素線の直径と本数のベストの組合せがある.本数が多すぎると返って鈍重な音になる.
 7本撚りは配線時に切ったり曲げたりする時,ほどけてこないように,固く撚っておかなければならない.まず2497を20cm〜25cmに切る.ケーブルの外被にはメーカー名が印刷されているが,MOGAMIのM側の切口をサインペンでマークしておく.M側を信号源とか電i原といったエネルギー源として使うと音が良いからだ.
 外被を剥き取り,素線を7本取り出し,先端をよじってハンダで留める.ここを右手で持ち,7本を左手で集めて引張りながら,右手で回転させる.時々乱れを直し,最後まで撚り終える.1箇所でも瘤ができれば,その部分は使えない.終端は1本だけ長くなるはずだ.7本撚りの中心線は撚れないからだ.ドリルで回転しても決してうまくいかない.両端を固定すると,中心線と外側線の長さのバランスが取れないからだ.
 特に撚り線を作る前は必ず手を洗う.撚り終った時はあせだらけというのでは始めから使えない.アンプ配線時にはしょっちゅう手を洗う.まるで外科手術のようだが,こういう習慣を身に付けよう.これが良い音へのパスポートだ。
」 
  
 最初に作ったバッテリードライブのプリメインアンプの音と製作の容易さから、すべてバッテリードライブのマルチアンプシステムを作ることを決心した。JBLのドライバー購入とウッドホーンの製作、DCプリアンプ、10W×6. 3WAYマルチパワーアンプ、レコードプレイヤーの製作、モーター制御アンプの製作の順に製作し、すべてトラブルもなく仕上がった。JBLのスピーカーは能率が高く、1つのスピーカー当たり10Wもあれば十分で、普通に聴く場合は、プリアンプのボリューム目盛り5のうちの1で十分で、家族が誰もいない時、2で聴いている。
 
 学生時代に購入した森山良子のカレッジフォークソングのボーカルが目の前で歌っているような感覚であった。JAZZのオーネットコールマンのアルトサックス、エリックドルフィーのバリトンサックス、コルトレーンのテナーも今までにない表現力であった。マイルスのトランペットのミュート音は突き刺さるように音が前に出てくる。
 
 音は素晴らしく、満足している。最初はCDデッキもプラグの差し替えで聴いていたが、数分聴いているとディジタル音がつまらなくなり、CDデッキは片付けてしまい、もっぱらレコードで音楽(JAZZ中心)を聴いている。このシステムでは明らかにレコードとCDの音の違いは区別できます。最近は、地方では、電気店などでアナログ装置に出会えるのは滅多になく、JBLやアルテックの最近のアナログ音を聞く機会もめっきり減り、残念です。
 
■金田明彦著、「時空を超えた音楽再現 オーディオDCアンプシステム(上、下巻)」、誠文堂新光社


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