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荷重と変位の測定

荷重計(ロードセル)

 ロードセルの構造は図1のようになっている。丸棒に抵抗線ひずみゲージが接着剤で貼り付けてある。荷重と直角方向のゲージ(ダミーゲージ)は温度変化による抵抗値の変化を打ち消すためにある。

 ひずみゲージは直径 0.025 mm 程度の細線を図2のようにグリッドやソレノイド状に曲げて接着剤で薄紙に貼り付けたもので,Lは 1.5〜200 mm 程度,25 mm のものが一般的で抵抗値は 50〜2,000 Ωであるが,120 Ω,350 Ω のものがよく使用される。
 

 電気抵抗Rは細線の断面積A,長さL,比抵抗ρのとき,R = ρL / A で表される。貼り付けた材料が荷重を受けて長さがΔLだけ変形すると貼られたひずみゲージは材料と共に引き伸ばされるので抵抗値はΔRだけ変化する。

      ΔR/R=k・ΔL/L

 この抵抗値の変化をホイーストン・ブリッジ回路で検出し増幅すると材料のひずみe= ΔL/Lが分かり,材料のヤング係数,断面積から作用している荷重Pの大きさが測定できることになる。 
 
      P=σ・Ao=(E・e)Ao=E・(ΔL/L)・Ao
 
 ひずみゲージは変位センサーであり微小な変位,ひずみの測定に用いられ,これらを応用して,重量,力や圧力も測定することができる。
 
 このように、力は直接測定することはできないので、変位や伸びを測定して、フックの法則から力や荷重に換算することになる。バネ秤を見ればわかるように、伸びの大きさに応じて目盛りが記されている。
図1 ロードセルへの応用 図2 ひずみゲージの形状
  
ひずみ測定回路
ホイーストン・ブリッジ回路
ひずみゲージの長さ
   
差動変圧器  伸びの測定

 図5に示すように,円筒形のボビンの中央に一次コイル,その両端に,二つの二次コイルを巻き,それらを図のように結線すると,コイルの中心の棒状の鉄心がコイルの中央にあるとき,2つの二次コイルに発生する交流誘導電圧は互いに打ち消しあって0であるが,鉄心が中央の位置から変位すると,一方の二次コイルの電圧が大きくなり,変位に比例した差の電圧が生ずる。このように鉄心の変位を交流電圧の大きさとして測定する装置を差動変圧器(差動トランス,differential transformer)と言う。一次電圧として,10V程度の周波数50Hzの交流電圧,感度を上げたいときは,数百〜数千Hzの交流を用いる。分解能は1μm程度のものまである。測定範囲も数十mmのものまである
 
 
図5 差動変圧器
 
ひずみや伸びの計測  較正,キャリブレーションについて
 
 ひずみや伸びの計測においては,電気信号に変換するため,必ず,計測器が関係してくる。電気信号は微小であるので増幅器が使われるが,増幅器の増幅率,直線性が関係してくるので,実験を行う前に,実際の物理量を与えて,増幅率,直線性を調べる必要がある。即ち,較正(キャリブレーション)が必要である。
 例えば、1967年頃、ネジ式の日本製引張試験機が登場した。引張圧縮のひずみ制御の低サイクル疲労試験を行ったが、毎朝、実験前に10kgの錘を1個ずつ、合計10個乗せて、増幅器や記録計などのキャリブレーション(較正)を行い調整した。圧縮の時、座屈を防ぐ治具の具合が今ひとつであり、大学の工作工場で調整した。差動変圧器はマイクロメーターと同様な原理の変位を与える較正装置があり定期的に確認した。引張試験機のロードセルは、金属枠にダイヤルゲージを取り付け、金属枠に圧縮荷重を作用させて、金属枠の変位を測定して荷重に換算する専用の較正器が付属していた。アンプなど組み立てし、調整するとき、基板に息を吹きかけただけで電流が変化する程、電子部品は温度に敏感である。その点、機械式のダイヤルゲージやマイクロメータなどは影響される因子が少ない。最近、ディジタル表示器付き計測器が多いが、較正はどのようにするのか疑問を持つ場合がある。微少な変化量を電気信号に変換する場合、誤った実験結果を避けるためにも実験者は常に較正について注意すべきである。結果が予想できる測定の場合は測定器の異常が発見されやすいが、そうでない場合は実験結果において、取り返しの付かない場合が生ずる可能性がある。研究室でも、較正をしなかったために、半年間のデータを無駄にしたことがある。
 ひずみゲージを使用した計測器を製作するとき、ゲージの貼り方の高度な技術が必要、キャリブレーションは変位が微少量であることから難しく、余り作りたくないと感じている。また、測定器によっては自分では較正出来ず、メーカーに較正して貰わなければならない。また、引張試験機も機械的性質の証明書を発行するためには、定期的に資格のある第3者に較正をして貰う必要がある。
 
アナログ電圧からディジタル量への変換  AD変換 -----------16ビットの場合
 
 最近は,計測器がパソコンを内蔵しているか,計測器をパソコンにつないでデータを記録することが一般的に行われている。計測器やセンサーなどからパソコンに取り込む場合に必ずAD変換(アナログ量からディジタル量に変換)している。このための専用のボードが市販されている。
 以下,16ビットの場合に,アナログ電圧をディジタル量に変換する方法について述べる。
 図6ではアナログ電圧を,44.1kHzでサンプリングし,ディジタル量に変換する場合を示している。サンプリング周波数44.1kHzのとき,1/44100secの間に,電圧測定,データ送信を行う。実際は,サンプリング周波数の半分程度の時間における最初と最後の電圧V1,V2の電圧を測定し,平均値を取り込む。
 

 
 図5 AD変換: アナログ電圧をディジタル信号に変換
                16ビット,44.1Hzの場合

 
 図6 ±5V の電圧を16ビットのディジタル量にAD変換
 
16ビットであれば,216 ( =65,536)通りの1,0の表現方法が可能であり,±5Vであれば,
   10V÷65,535 digit = 0.000 152 6 v/digit   量子化1に対する電圧
 
 サンプリング周波数,44.1 kHzであれば,1秒間に44,100回サンプリングし,電圧に対応するデジタル量に変換する。実際は,パルス幅、信号電送の処理等の関係でサンプリングは,サンプリング周波数の半分程度のサンプリング時間となる。