【問題1】 | 図1のような構造物において、部材BCは 長さls、直径dの鋼の針金、部材ABは長さlw、断面の一辺がcの正方形の木材である。B点に荷重Pが作用するとき、次の問の解を求める。ただし、鋼と木材のヤング率をそれぞれ、Es, Ewとする。 |
(1). | 部材ABに作用する荷重Pw, 部材BCに作用する荷重Psを求める。 |
(2). | 部材ABに生ずる応力σw, 部材BCに生ずる応力σsを求める。 |
(3). | 部材ABの伸びδw, 部材BCの伸びδsを求める。 |
(4). | B点の垂直変位δv、水平変位δh を求める。 |
(5). | P=1800N, lw=5m, ls=3m, d=3 mm, c=25 mm, Es=2.06×105MPa, Ew=1.00×104MPaのとき、 B点の垂直変位δv、水平変位δh を求める。 |
図1 図2 |
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【解】 | |
(1). | B点に作用する荷重PをAB方向、BC方向成分に分解すると図2のようになる。木材ABには、図のPwの荷重が作用し、壁からの反力Pwが作用し、木材ABはPwの圧縮荷重が作用する。一方、針金BCにはPsの荷重が作用し、壁からの反力を考慮すると、針金BCは引張荷重Psを受ける。Pw、Psは図2のように、力の釣り合いから次のように求めることが出来る。 |
(2). | AB, BCに生ずる応力は次式になる。Pwは圧縮荷重 |
(3). | フックの法則から伸びは次式となる。 |
δwは圧縮変位である。 | |
(4). | δwの水平成分(δw)h 、垂直成分(δw)vとすると つぎに、針金の変位δsは水平方向の変位だけである。 B点の垂直変位δv、水平変位δh とおくと |
となる。 |
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(5). | P=1800N=1.8×103N, lw=5m=5×103 mm , ls=3m=3×103 mm , d=3 mm, c=25 mm=2.5×10mm, Es=2.06×105MPa, Ew=1.00×104MPa , tanθ=3/4=0.75=7.5×10-1を代入 |
垂直変位δv、水平変位δh は |
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AB, BCに生ずる応力は(Pwは圧縮荷重のため、σwは−の符号を付けた) |
■ | 「はじめての」材料力学、【例題1.1】で、ミスのない計算方法を詳細に解説していますが、ここでは簡単に注意点を述べます。 |
代入前に、単位を考慮し、○.○○○ × 10○ の形に数値を揃え,仮数部、指数部を整理する。整理した値を文字式に代入する。荷重Pは[N],直径などの寸法は、[mm]を用いて、応力は[N/mm2]で求め、1 N/mm2 =106 N/m2 = 1 MPa を利用する。機械の部品などの寸法は、SI単位の[m]ではかなり小さい値となり、[Pa]から[MPa]への変換の場合に、計算ミスが入る場合が多く見受けられる。また、設計図の表記は、[mm]であるので、直径などの寸法は、[mm]を用いて表した方が都合がよい。仮数部を電卓で計算、指数部は暗算で計算する。0を入力する回数が減り、電卓の打ち間違いも減る。計算後、必ず検算をする習慣を身につける。そのために検算しやすいように余り省略しない。 |
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次式で、4項目を見ると、7.5/9、4/3.142はだいたい、1ぐらい。仮数部は1.8程度、指数部は102となるから、:計算結果は、だいたい180MPa程度のオーダーと予想できる。 |
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大学院時代、解析計算をしていた先輩が、+−を間違えたために、1年間の計算が無駄になったとぼやいていたことを経験している。 |