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CDからどのように音が鳴るのか

 この資料は、研究室の学生がオーディオメーカーの就職試験の際、「CDから音が鳴るのはどういう仕組みか」と質問され、答えられなかったことを聞いて、当時、パソコンにAD変換器を組み込み、ソフトをカスタマイズしたりしていたので、資料を作り、これを研究室に置いたり、講義のプレゼンの余談として話したりしたものです。
 
■CDディスクの表面
 
 表面には、トラックに沿って窪んだいろいろな長さのピット(孔)が並んでいる。トラックの幅、ピットの幅等は図に示す寸法です。ピットの長さは、ディジタル量により、0.9μmから3.3μmの範囲で変化します。
 

 
図1 CDディスクの表面 1μm=0.001mm
 
■CDの製造過程
 
 ガラスの円盤の表面を研磨し、平坦に仕上げ,そのガラス板の上にレジスト剤(感光剤)と塗布します。 デジタル化された音声信号をレーザーを使って照射します。レジスト剤を洗い落とす(現像)と所々にくぼみができます。このくぼみをピットといいます。
 
 くぼみに沿ってメッキをするため、電極をつけ,ぶ厚くニッケルメッキします(メタルマスター)。その後,ガラス板と分離します。同様な工程で,マザー,スタンパーを作り,これに,プラスチックを射出成形(圧力を加えて液状のプラスチックを流し込む)してCDを作ります。ディジタル信号を表すピットがプラスチックの表面に出来ることになります。このCDにアルミニウムの反射膜をつけます。反射膜を保護するための保護膜をつけます。保護膜によりディスクの表面は平らになり、図1のようなディジタル量に応じた凹凸はなくなりますので走査型電子顕微鏡では何も写りません。。
 
(a)メタルマスター (b)マザー (c)スタンパー

図2 ディジタル信号に対応する型
 
■ディジタル量の記録から電圧への変換

 レーザー光を表面に当て、反射してくる強さをセンサーで検出し電流に変換。さらに電圧に変換する。ピットの底とディスク表面からの反射は強弱が生じる。トラックの各位置は、クロックと同期している。図3のように、クロックパルスに対応して レーザー光を当て、サンプリングする。
 

 
図3 ピットからデイジタル信号への変換
 
 実際にスピーカーから音を出すためには取り込んだディジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換が行われます。
 
■CDデッキのメカニズム
 ハイテク技術で各部を制御
 

 
図4 CDデッキのメカニズム
 
■アナログ電圧からディジタル量への変換  AD変換 -----------16ビットの場合
 
 計測器やセンサーなどからパソコンに取り込む場合に必ずAD変換している。専用のボードが市販されている。16ビットで44.1kHzのサンプリング周波数の場合,1/44100秒に1回,アナログ電圧をサンプリングすることになるが,この間に電圧がV1からV2に変化したとき,平均値(V1+V2)/2の電圧ががサンプリングされ,この値に対応する量子化されたディジタル量が出力される。実際は,1/44100秒の間に,サンプリング,データ伝送の処理が行われるのでサンプリング時間はもっと短くなります。
 CDの原盤を作るときは、アナログ信号をディジタル信号に変換した後、レーザー加工します。
 実際にスピーカーから音を出すためには,ディジタル量から,アナログ電圧への変換(DA変換,AD変換の逆)が行われます。
 
 取り込まれる音楽データは最大周波数20kHz程度になります。また,サンプリング時間の平均値となるので,この時間内に変化した量は無視されます。質の高いオーディオ装置で聴くとCDとアナログレコードの音の差ははっきりします。人間の耳の細胞は,90kHzの音にも反応していると言われています。どのように脳に伝達されているか解りませんが。
 

  
図5 AD変換: アナログ電圧をサンプリング、クロック間隔の平均電圧を得る
 
 16ビットであれば、216=65536通りの1,0の表現が可能であるので、図6のようにあらかじめアナログ量に対する整数値をを決めておく。これを量子化という。図の場合、-5Vから+5Vの範囲の電圧を量子化すると、量子化1digit当たりの電圧は0.001526Vとなる。これを2進数で表すとディジタル量が得られる。
 

 
図6 ±5V の電圧を16ビットのディジタル量にAD変換
  DA変換はAD変換の逆の変換になります。

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