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7.2.6 炭素鋼を加熱して急冷するときの組織変化
  
◆A3変態, A1変態は,徐冷した場合の変態
 
 均一なオーイテナィトγ→  α(C<0.02%),Fe3C(C>6.67%),パーライト(α+ Fe3C)の 相の生成→
 炭素原子の移動(拡散) → 変態を起こすのに十分な時間が必要
           ↓
      緩やかな冷却速度  組織が十分成長,粗大に
 
◆冷却速度を大きくしたら変態はどうなるか

  組織は成長せず → 組織は細かくなり強度大 
 
焼きなまし,焼鈍 Annealing 
 
  鋼をオーステナイトの状態から,
  緩やかな冷却速度で冷却:焼きなまし,焼鈍 電気炉の中において炉の電源を切りそのまま冷却、炉冷
 
  
焼きならし,焼準 Normalizing  
 
  鋼をオーステナイトの状態から,
  空気中で自然冷却 : 焼きならし,焼準  オーステナイトの状態の鋼を電気炉から取りだし、空気中に放置
  微細なパーライト   ソルバイト solbite
           
油焼き入れ Oil Quenching

  空冷よりも少し早い冷却速度(油焼き入れ)   トルースタイト Troostite
  パーライトやソルバイトと同じだが一層細かい組織
 
◆更に速い速度 トルースタイト+針状組織のマルテンサイト (Martensite)が混じる


 
水焼き入れ Quenching  マルテンサイト変態    γ → マルテンサイト
 
◆ 冷却速度大
  更に速い速度 水焼き入れ   組織全体が針状組織のマルテンサイト (Martensite)
     非常に硬く,この組織の変態温度は250℃程度
 パーライト→ソルバイト→トルースタイト→(トルースタイト+マルテンサイト)→ マルテンサイト

 
図1 マルテンサイト 針状組織
 
焼きもどし Tempering
 
 焼き入れしたままの鋼は非常に硬いが、反面もろく実際の使用に耐えない。焼き入れによって、表面と内部の冷却速度の相違から残留応力が存在し、時間が経つとこの応力は緩和され、寸法の狂いが生じる。また、焼き割れという現象も生じき裂が入る場合がある。
 これらを取り除くために、焼き入れ後、ある温度で保持する熱処理が焼きもどしである。組織は微細なパーライト、焼き戻しソルバイトになる。
 

 
図2 焼き戻しソルバイトsolbite 0.81%C 水焼き入れ後,
 600℃焼き戻し,×400
7.2.7 冷却速度を変化させたときの共析鋼の長さの変化
 
 
 
(a).除冷  slow cooling

   γ →  パーライト(Fe3C+α)
 
(b).空冷   air cooling

   γ →  ソルバイト

(c).油焼き入れ oil quenching

   変態温度の低下

   γ →   トルースタイト+
            マルテンサイト

(d).水焼き入れ water quenching
 
    γ  →   マルテンサイト

  Ar“  Ms点  250℃以下,膨張


 
図3 冷却速度を変化させたときの共析鋼の長さの変化
 
 水焼き入れは、硬度を得るために行うが、図3から炭素量0.55%以上では焼き入れ硬さは一定であることが分かる。
 
 
 
図4 焼き入れ硬さと炭素鋼の炭素量の関係

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