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7.炭素鋼の基礎
 
炭素鋼の精製
 
 ・鉄鉱石をコークス・石灰石と一緒に溶鉱炉に入れて熱風を送る → 還元されて → 銑鉄
 ・銑鉄を電気炉などで,鉄くずと一緒に余分の炭素を取り除く →鋼塊(Steel Ingot) →圧延、鍛造等の加工
 
7.1 純鉄の性質
 
 ・99.99% (フォーナイン) ・C 0.01%〜0.02%, Si 0.02〜0.05%, P<0.01%, S<0.03%
 ・主として電気材料に使用
 
純鉄の変態
 
 
 
7.2 炭素鋼の状態図 Fe - C
 
7.2.1 フェライト(Ferrite)とオーステナイト(austenite)

 ・炭素原子Cが鉄原子より小さいので隙間に入り込む 侵入型、すき間の大きいところにはいる。
 ・P,Q,R点の位置に侵入
 ・ γ 鉄は, α鉄よりも隙間が大きいので、多くの炭素を固溶
 ・ α鉄、 BCC 723℃で炭素Cを最大0.02%固溶
 ・ γ鉄, FCC 1147℃にて,炭素Cを最大2.03%固溶
 ・ C原子を固溶したα鉄をフェライト(Ferrite),強い
 ・ C原子を固溶したγ 鉄をオーステナイト(austenite), 変形しやすい,高温で存在
 
 *α鉄 体心のEの面ABCDに関して対称な点E'としたとき、4点EE'BCから等距離にある点S、4点EE'ABから等距離にある点S'が隙間最大で、各辺の中点がそれに次いで大きい。
 
(a) BCC (b) FCC
図1 炭素原子Cの侵入箇所
7.2.2セメンタイト Cementite
 
 ・鉄と炭素の化合物 正斜方晶 Fe3C ・炭素量 6.67%  ・強度が高くもろい
 
7.2.4 Fe-C系状態図

 状態図では、フェライト(Ferrite)をα、オーステナイト(austenite)をγとおいている。
 

図2 炭素鋼の状態図
Fe-C系状態図に表れる反応
反応の名称 反応温度(℃) 反応を起こすC量の範囲(%)  反 応 式
包晶反応 1493 約0.1〜0.51  δ + L ⇔ γ  L:液相
共晶反応 1147 2.06〜6.67  L  ⇔ γ + Fe3C
共析反応 723 0.02〜6.67  γ ⇔ α + Fe3C
  
■実用的な温度と濃度範囲のFe-C系状態図
 

 
図3 実用的な温度と濃度範囲のFe-C系状態図
 
 GS線:A3変態     γ  ⇔  α+γ    A3 変態
 
 SE線: Acm変態   γ  ⇔  Fe3C+γ
 
 PK線: A1変態    γ  ⇔  パーライト(α)+ Fe3C    A1 変態線,共析変態 723℃ 
 
◆状態図は、温度と濃度を指定したとき,その点が存在する領域の相になっていることを示す。
◆2相以上の時は,濃度によって相の割合は異なる
 
7.2.5 炭素鋼を加熱し冷却するときの組織変化
 
@ 炭素量C%<0.8%の場合 0.3%C 900℃から冷却

・900℃では オーステナイトγ  ・温度低下 T1 でGS線と 交差( =800℃)

   A1 変態: γ →  α  フェライトの結晶が析出   初析フェライト, 相は, γ+α の2相に
    n = 2, r = 2、 相律 f = n + 1- r = 1 より、温度は変化し低下する
 

 
図4 炭素量C%<0.8%の炭素鋼の冷却

 
図5 A1変態:  γ →  α
 ・温度低下と共にαの量が増加
   フェライトαは0.02%の炭素Cしか固溶できないので、未変態のオーステナイトの炭素濃度は高くなる
 
 ・未変態のオーステナイト炭素濃度が,0.8%に達したとき,温度723℃  
 
   共析変態  γ → パーライト(Fe3C+α)
 共析変態中 温度一定,オーステナイトγ,初析フェライト,パーライトの3相
  n = 2(Fe,C), r=3(γ,α, Fe3c)  相律 f = n +1- r = 0  温度一定

 
図6 共析変態
 
◆ 共析変態完了後 温度は室温まで低下,相変化無し
 
 室温での相     初析フェライト+パーライト(Fe3C+α)
 
 0.8%>炭素量では、炭素量が少ないほど初析フェライトの量は多く,の量パーライトは少ない


 
図7 SS400の組織  0.18%程度の炭素量 
 
A 炭素量C%>0.8%の場合
  
●1.0%C 900℃から冷却

 ・ 900℃では,オーステナイトの相
 ・温度低下 ES線と交わる温度 約800℃ オーステナイト→セメンタイトに変わる
    Acm変態    γ →  Fe3C+γ

・セメンタイトFe3Cは,多くの炭素を必要とするため,変態が 進むにつれて,オーステナイト中の炭素が吸収され,
 オーステナイト中の炭素濃度はだんだん低下する。全体は1.0%
・未変態のオーステナイト炭素濃度が,0.8%に達したとき,
 温度723℃ 共析変態  γ → パーライト(Fe3C + α)

 
図8 1.0%Cの炭素鋼の900℃からの冷却

 
図9
 
B 炭素量C%=0.8%の場合 共析鋼
  
 ・0.8%C 900℃から冷却  900℃では,オーステナイトの相
 ・温度低下 S点に達する.温度 723℃

    共析変態  γ → パーライト(Fe3C+α)

 
 図10 0.8%C 900℃から冷却
 

 
図11 共析変態
◆変態完了 →温度低下

 組織全面がパーライト(Fe3C + α)  :共析鋼、強度が高く、粘さもあり、工具鋼として使われる
◆パーライト pearlite
 
 ・フェライトとセメンタイトの層状組織,この2つの組織が共析反応で析出,細かい組織
 ・真珠,パールのような輝き
 ・柔らかいフェライトと強いセメンタイト 複合材料のような役割 結果として粘り強い材料  工具鋼
 ・共析鋼0.8%C 全体がパーライト
 

 
図12 パーライト組織
 
炭素量  C%<0.8%    亜共析鋼
      C%=0.8%    共析鋼
      C%>0.8%    過共析鋼

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