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炭素鋼をオーステナイトの状態から徐冷した場合の状態の変化
 炭素鋼をオーステナイトγの状態から徐冷した場合の状態の変化を図で調べてみる。Aの炭素鋼は、炭素量a%の亜共析鋼で、0.8%Cは共析鋼で、Bの炭素鋼は、炭素量b%の過共析鋼である。A0線は加熱時にセメンタイトが磁気を失う温度で100℃である。A2線はフェライトが磁気を失う温度で768℃である。A1線PSKは、723℃で共析反応を生ずる温度で、共析変態、パーライト変態あるいはA1変態という。GSは A3線と言い、亜共析鋼は加熱時に均一なオーステナイトになる温度である。ES線は、Acm線といい、加熱時に過共析鋼が均一なオーステナイトになる温度である。
(1).亜共析鋼 a%C の場合
 温度が降下して、GS線に達したとき温度t1で、オーステナイトγからフェライトαが析出し始める。更に温度が低下しフェライトαの相は増加する。GPSの領域は オーステナイトγとフェライトαは共存する領域である。 温度t2に達したとき、二相の量的割合は
      
となる。 α(a2)はa2のC濃度のフェライトαである。A3からA1で析出したフェライトを初析フェライトという。温度が低下するとフェライトαは増し、オーステナイトγは減少する。フェライトαは0.02%しか炭素を固溶出来ないため、未変態のオーステナイトγの炭素濃度は増加する。各温度のオーステナイトγの炭素濃度はGS線で与えられる。温度が723℃に達したとき、炭素濃度は0.8%となり、次の共析変態、A1変態が開始する。
 
      
 γ(S)は一定の温度723℃でパーライトに変わる.したがって共析反応が終了した状態でほ初析フェライトとパーライトの混合組織となる.A1変態を終了し,さらに冷却するとαのC濃度はPQ線に沿って変化し,Fe3CのC濃度はKを通る垂線に沿って変化する.t4の温度ではその量的割合は
      
となる.ただしPQ線は温度軸に非常に接近しているので,A1温度以下では組織の変化はないと考えてよい。
 
(2). 0.8%C,共析鋼の場合
 0.8%C組成の鋼(共析鋼)はS点まではγである.S点において共析反応
      
が起こり,γはすべてパーライトに変わる.共析温度以下では上の場合と同様に変化はなく室温においてはパーライトのみの組織となる。パーライトはフェライトとセメンタイトFe3Cの層状組織である。フェライトαとセメンタイトFe3Cの割合は次式で与えられる。
 
      
(3).B組成の鋼(過共析鋼)の場合
 B組成の鋼(過共析鋼)をB点から冷却すると,Acm線に達するまではγのみであるが,Acm線と交わる点t6に達するとセメンタイトがγの粒界に析出しはじめる.このセメンタイトほ網目状に析出する.これを初析セメンタイト(primary cementite)という.温度の低下とともに、初析セメンタイトの量は増加し、未変態のオーステナイトの炭素濃度はES線に沿って低下する。t7の温度になると
 
     
となる。
 共析温度のt8に達するとオーステナイトの炭素濃度は0.8%となり、この温度でγは共析反応を起こして、オーステナイトはパーライトになる.

 以下の温度では,ほかの場合と同様で,室温における組織は網目状のセメンタイトとパーライトとになる。初析セメンタイトの量が非常に少ないがそれは上の量的関係を表わす式から当然である.温度t8における組織の割合は次式で与えられる。
      
 温度t9における組織の割合は次式で与えられる
      
 

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