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引張変形に及ぼす温度の影響

 一般の材料と同様、室温ではぜい性的性質を示すAS,PMMA材は60℃では、延性的になり、室温では延性的な性質を示すPC材は、低温ではぜい性的性質を示す。

 AS材の異なる温度における応力−ひずみ曲線を比較すると,曲線の形がかなり変化し,特に,60℃ではPC材と同様な形状であり,延性的に変化してしている.この傾向は,0.1%,0.01%の場合も同様である.高温(60℃)おいては,AS材は降伏ピークを示し,破断伸びがかなり大きく,ネッキングを生じ,延性的な性質に変化する.破断までのガラス短繊維近傍の変形は延性的なPC材と同様な様相を示す
 
AS材の温度依存性

Fig.1 60℃におけるAS材の応力−ひずみ曲線

Fig.2 試験温度-76℃におけるAS材の応力−ひずみ曲線

Fig.3 試験温度-192℃におけるAS材の応力−ひずみ曲線

Fig.4 60℃におけるAS材の変形の様相
繊維の破断とダイヤモンドき裂が生ずる。


Fig.5 60℃におけるAS材の引張破面,Wf=1%
ガラス短繊維の引き抜け、剥離が観察される。

Fig.6 試験温度-76℃におけるAS材の引張破面,Wf=1%

Fig.7 試験温度-192℃におけるAS材の引張破面,Wf=1%


(a). 60℃の破壊の様相

(b). -76℃の破壊の様相


(c). -192℃の破壊の様相

 低温(-192℃)においては,PC材は降伏ピークを示さなくなり,破断伸びも極端に小さくなり,ぜい性的な性質に変化する.室温で観察されたガラス短繊維の剥離はわずかなものとなり,AS材で観察されたクレイズが,わずかなガラス短繊維数ではあるが,観察された.

 PC材の引張の場合の破壊の様相を図式的にまとめると,(a),(b),(c)のようになる.室温,高温,-76℃ の場合,内部のガラス短繊維に発生したダイヤモンドき裂,剥離箇所が破壊の起点である.-192℃では,表面クレイズが破壊の起点となる.

 
PC材の温度依存性



Fig.8 試験温度50℃におけるPC材の応力−ひずみ曲線

Fig.9 試験温度-76℃におけるPC材の応力−ひずみ曲線

Fig.10 試験温度-192℃におけるPC材の応力−ひずみ曲線

Fig.11 試験温度50℃における引張破面
試験片角部のガラス短繊維剥離箇所が破壊起点である場合

Fig.12 試験温度-76℃の引張破面写真
破壊起点が試験片側面表面近くのダイヤモンドき裂である場合

Fig.13 試験温度-192℃の引張破面写真,PC材,Wf=1%
表面クレイズから破壊が開始した場合

Fig.14 試験温度-192℃の引張破面写真,PC材,Wf=1%

(a)50℃

(b)-76℃

(c) -192℃

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