第1章 練習問題1.1

記号,文字 意味 教科書での単位
荷重 N
変形前の断面積 mm2
σ 応力 MPa
δ 変位 mm
τmax 最大せん断応力 MPa
e,ε ひずみ 単位無しあるいは%
σn 垂直応力 MPa
γ せん断ひずみ 単位無しあるいは%
Δl 伸び mm
直径 mm


第2章 練習問題2 2.13 回答例

(1) 縦弾性係数 modulus of longitudinal elasticity
 引張応力とひずみで表わしたフックの法則σ=Eεの比例定数であり,Eで表す。ヤング率,ヤング係数とも言い,応力と同じ単位を有する。この弾性係数は材料固有の値である。鋼材の場合はヤング率は 20.6×10 MPaである。
 この値が大きい材料ほど,同じひずみを与えるのに大きな応力を必要とする。つまり変形量は小さい。
 
(2) 横弾性係数 modulus of transverse elasticity
 せん断変形においても,フックの法則が成り立ち,せん断応力τとせん断ひずみγの関係 , τ=Gγ における比例定数Gである。物理学では剛性率である。単位は応力と同じで,鋼材の場合,G=8.0×10MPaである。材料の軸方向を縦と考えると,Eが縦方向の弾性係数であり,Gが横方向の弾性係数である。この実際の意味は,結晶格子のせん断の場合の変形で,Gが小さいと横にずれやすいことを意味している。
 
(3) 引張強さ tensile strength
 引張強さσは、材料の引張りに対する強さを表す値である。引張試験において,試験片が耐えられる最大荷重点から計算される。設計の際,使用材料の引張強さを用いて,設計した寸法で応力を計算した場合に引張強さ以下になるようにする。
 
(4) 耐力 proof stress
 降伏点を明瞭に示さない材料の場合,下降伏応力に相当する応力のことである。引張試験から得られた応力−ひずみ曲線から,0.2%の永久ひずみを生ずる応力の値を読み取りこれを耐力とする。0.2%の永久ひずみに対応する応力値という意味でσ0.2で表す。
 
(5) 許容応力 allowable stress
 使用材料の強さを安全係数で割った値を許容応力という。何らかの原因で予想以上の大きな応力が発生しても安全なように使用材料の強度より非常に小さい値を採用する。設計する時,生ずる応力がこの応力以下になるように部品や部材の形状・寸法を決める。使用応力と同じ意味である。
 
(6) 安全率 safty factor ,factor of safty
 設計計算では,寸法を決めた結果,材料内部に生ずる最大応力σmax が材料の強さよりかなり低くなるように設定する。これは,不測の事態が生じて、設計時仮定した荷重より大きな荷重が作用する場合,あるいはたまたま材料に欠陥が存在し,強度が低下している場合等を考慮して,安全に対して余裕を持って設計するためである。計算で得られた応力が材料の強さの1/nを越えないように寸法を決定する。nが安全率である。安全係数とも言う。
 安全率が大きいほど,寸法は大きくなり,十分余裕を持った安全な設計ということになるが,材料費と重量がかさみ,省資源,軽量化にも反し,不経済になることから,安全率の大きさは,これらと安全性,その他の条件などの兼ね合い,材料の信頼性の程度,荷重の種類などで決定する

【説明問題に対する対策】

 将来,仕事をする際あるいは日常生活においても,自分の考えていることを100%相手に伝えることは大事なことで,必要とされる能力である。語句の説明を求められたとき,いろいろな面から説明することが必要である。初めて語句に出会ったとき,説明するときのキーワードは何かを見出すことに心がけると良いと思う。最低限,次の事項について記述する。

 @言葉の定義,数式で表現できる場合は定義式
 A物理的な意味,何故そのようなことが生ずるのかあるいは問題になるのか
 B具体的な例を挙げる
 C設計する際にどのように使われるか

また,説明する文章を書いたとき,自分より材料力学の知識がない人が理解できるかどうかを考えてみる。


【例題】 応力集中について説明せよ

  回答例
断面の形状が変化した場合に,局部的に大きな応力が生ずる現象 ←@
応力集中を引き起こす原因としては,リベットの穴や,丸軸に歯車を固定するキー溝ボルト穴などの人工的な切り欠きと,材料中に含まれるや、き裂などの欠陥非金属介在物 ←A
円孔の場合,穴がない断面の3倍の応力が生ずる ←B
応力集中はすべての破壊現象に密接に関係している ←A,B
部品や部材の形が急激に変化する箇所がある場合は,応力集中を考慮して寸法を決めなくてはならない。 ←C
軸の直径が変わるその境界では,一般に丸みを付けて緩やかに変える ←C

以上は,説明のために箇条書きにしたが,実際は文章形式で書く。
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