小山研研究室・産学共同研究

ホタテ貝殻の有効利用 > 産学共同研究


■実用化に関する産学共同研究の共通認識

 ホタテ貝殻の処理問題は差し迫った問題ですが,多くのリサイクル品の場合,リサイクル品は純正品よりも性能が低下し,コスト高になるのが一般的ですが,私達は,有効利用するばかりでなく,廃棄物を付加価値のある製品にし,資源化することを目標にしています。
 ホタテ貝殻セラミックスの種々の機能を応用した製品を実用化する中で,シックハウス症候群ばかりでなく,衣食住に関係する製品の多くに,化学物質が含まれ,人体への有害性を多くの研究者が指摘していることが判明しました。これらが,ガン,アトピー,アレルギー,環境ホルモン,免疫力の低下等に関係してい.ると述べています。また,ハイテクの時代にいっこうに無くならない食中毒の問題。私達の生活を便利にしてきた科学技術のあり方を考えざるを得ません。環境に負荷を与えない,有害化学物質を使用しないことを製品開発の前提にしています。
 「ホタテ貝殻の有効利用」に関する産学共同研究では,下記のような共通認識のもとに研究開発を行っています。

環境問題への対応 環境に負荷を与えない製品
 廃棄物処理問題の解決、廃棄物の有効利用,廃棄物の資源化
すべて天然素材、有害化学物質は使用しない
 私達の衣食住のすべてに化学物質が存在し,人体に問題の化学物質が使われています。
社会的ニーズに対応 誰もが使い、役立つ製品の開発
 シックハウス問題の解決、食中毒問題の解決,水虫問題の解決、院内感染の解決無害な日用品の開発
世界に通用する、オリジナルな製品
 開発した製品は,すでに海外で販売されています。壁材(米国,EU,中国),インソール,カルシウムライス,水虫治療薬など。
 


 陸奥湾の沿岸のあちこちに廃棄物の山となって廃棄されているホタテ貝殻の山を何とか有効利用できないかと思い、平成6年に研究をスタートしました。機械系の材料科学が専門であるので、ホタテ貝は泳ぐため、貝殻は軽くて強いと考えられることから、進化の過程で得た合理的な構造自体を解析し、工学に応用することと、貝殻は海に溶けた二酸化炭素を炭素源として主成分の炭酸カルシウムを生成するのでこのメカニズムがわかれば、人工的に二酸化炭素軽減することに役立つのではと考えました。
 また、釣りに行ったときに、貝殻の山の回りには草木が全く生長していないことに不思議さを感じていました。貝殻は焼かなくともpH8〜pH9程度のアルカリで、焼きますと酸化カルシウムになり、その水溶液は水酸化カルシウムとなって、pH12.5程度の強アルカリに変身します。一般に、アルカリが高い物質は抗菌作用があることは以前から知られています。
 基礎研究として、貝殻の構造と強度を調べ、下記の論文を機械学会「自然界にある材料の変形挙動」のオーガナイズドセッションで発表しました。それまで、走査型電子顕微鏡で金属、複合材料などの人工物を観察してきましたが、電子顕微鏡で見る生体の構造は全く別世界の様相でした。

青森県平内町貝殻工場

1 小山、北川、鈴木、伊達 「貝殻の構造と変形挙動」、日本機械学会平成7年度材料力学部門講演会講演論文集,Vol.A(1995.8).
2 小山信次 「貝殻の構造と変形挙動」, 八戸工業大学紀要,第15巻,pp.139-143(1996.2).

 (株)チャフローズコーポレーション社長笹谷広治氏は、青森県出身であり、貝殻を有効利用したいと考えていた。また、漁師の家に育ち、幼少の頃から、貝殻の中に卵や、ニラ、みそ等を入れて焼く、「貝焼き」が風邪を引いたときに効能があることに何かあると感じていた。また、有効利用として開発したホタテ貝殻の壁材の開発段階から、たばこの臭いがしない、明るい、暖かいなど特別の機能を感じていた。また、夏の暑い時期にサンダル履きで壁材を製造していた作業員の水虫が治ってしまったことから抗菌の機能も感じていた。

 笹谷氏は貝殻の研究をしている研究者を探していて、上記論文1の発表を聞いた青森県工業試験所の方の紹介で私のところに産学共同研究のお話があり、平成11年に産学共同研究がスタートし、情報を交換することにより、研究を進め、以来、種々の製品を実用化してきた。


 産学共同研究以降は、主として機能性を中心に研究を行い、壁材のホルムアルデヒド軽減試験とこの機能に影響する因子とメカニズムについて調べてきた。未発表だが、メカニズムについてはほぼ解明された。抗菌効果に関しては大腸菌から試験を始め、身の回りの有害な種々の菌について、抗菌実験をしてきた。現在は、まだ実験をしていない菌の試験と、抗菌のメカニズムについて研究を行っている。その他の機能についても研究中である。

 大学では、ホタテ貝殻セラミックスの機能の定性的、定量的評価とメカニズムの解明、試作品の機能評価を行い、企業は研究結果を基に製品化のための技術開発を行ってきた。

 ホタテ貝殻セラミックスの機能はまだ未知数で可能性を秘めている。材料学的に見ても、一つの材料が多機能を有することは珍しく、生体材料が有する特徴かと思われる。既存品にホタテ貝殻セラミックスを付加する技術を開発すれば、多機能で付加価値の高い製品に変えることができる。現在、進行中の開発製品は種々あり、安全と健康に配慮した製品が期待できる。
 

その他の開発製品の詳細シックハウスクリニック計画


産学共同研究の論文発表、報告書等

「ホタテ貝殻に関する」産学共同研究論文等リスト

1. 小山、北川、鈴木、伊達「貝殻の構造と変形挙動」、日本機械学会平成7年度材料力学部門講演会講演論文集,Vol.A, 1995.8.
2. 小山信次「貝殻の構造と変形挙動」, 八戸工業大学紀要,第15巻,pp.139-143(1996.2).
3. 小山信次産学共同研究中間報告書「ホタテ貝殻のパワー  ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」、平成12年12月.
4. 小山,奥田,福原,小比類巻,笹谷八戸工業大学食品工学研究所紀要,「ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」,第12巻,p.1(2001.2).
5. 小山,小比類巻,奥田他化学学会東北地方大会講演会,「ホタテ貝殻セラミックスによるホルムアルデビドの除去効果」(2001.9).
6. 小山,奥田,笹谷「ホタテ貝殻の有効利用」に関する産学協同研究成果中間発表,青森県庁記者クラブ,2001.11.1.
7. 小山,小比類,奥田,吉田他,「ホタテ貝殻セラミックスによるホルムアルデヒドの除去効果」,化学系7学協会連合東北地方大会,2001.9.
8. 笹谷,小山,「『研究開発型』ベンチャーの要件」,日本ベンチャー学会講演会,2001.11.
9. 吉田,小比類巻,小山,奥田,笹谷「ホタテ貝殻セラミックス壁材の室内環境中におけるホルムアルデヒド除去効果」,日本化学学会第81春季年会,講演予稿集, p. 613(2002.3).
10. 吉田,小比類巻,小山,奥田,福原,笹谷「ホタテ貝殻セラミックス壁材の室内環境中におけるホルムアルデヒド除去反応」,日本化学学会第82秋季年会,講演予稿集,p.50(2002.9).
11. T.Yoshida, W.Urai, T.Takahashi, S.Okuda, T.Kohiruimaki, 「Antibacterial functions of scallop shell ceramics(SCC)」, 化学系7学協会連合東北地方大会・東北地区化学教育研究協議会講演予稿集,p.14, (2002.10).
12. 笹谷廣治,小山信次,「21世紀に求められる研究開発型ベンチャーの役割」, 日本ベンチャー学会誌,No.3(200 2).
13. 小山信次, 奥田慎一, 笹谷廣治, 未来材料,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性とその実用化」,第2巻4号,p.43- 51(2002).
14. 奥田、小山、笹谷、福原、小比類巻,TOBIN,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性とその実用化」, No.20(2002).
15. 吉田,小山,奥田,笹谷,福原,小比類巻,八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要「ホタテ貝殻セラミックスのホルムアルデヒド軽減機能について」,第1巻,p.113-116(2003).
16. 吉田,小山,奥田,笹谷,福原,小比類巻八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要「ホタテ貝殻セラミックスの抗菌機能について」,第1巻,p.117-120(2003).
17. N. KOYAMA, K. SASAYA, T. YOSHIDA, C. FUKUHARA, T. KOHIRUIMAKI, S. OKUDA「Bionic Design of the Scallop Shell --- Development of New Products Applying Its Functions」, 'Recent Research Developments in Material Science ' , RESENT SIGNPOST (2003).
18. 小山、笹谷、吉田, コンバーテック、「ホタテ貝殻の有効利用に関する研究開発」, Vol.368(2003).
19. 小山信次、奥田愼一、他9企業,ホタテ貝殻の有効利用に関する研究開発,平成14年度ほたて貝殻フォーラム、青森県(2003).
20. 吉田,白井,小比類巻,小山,奥田,「ホタテ貝殻セラミックスのホルムアルデヒド軽減機構」, 化学系9学協会連合東北地方大会,(2003.10).
21. 吉田朋央、小比類巻孝幸、小山信次、奥田愼一, 「AHMT 法によるホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減性能評価」,平成16年度化学系学協会東北地方大会予稿集 p. 259(2004.9).
22. 武石健、佐藤浩、奥田愼一、小山信次,「セレウス菌に対するホタテ貝殻セラミックスの抗菌効果」, 平成16年度化学系学協会東北地方大会予稿集 p. 264(2004).
23. 小山信次, 「ホタテ貝殻のバイオニックデザイン」 TV,新聞記事等ファイル, 産学共同研究中間報告書, Vol 2(2004).
24. T.YOSHIDA, N.KOYAMA, K.SASAYA, T.KOHIRUIMAKI, S.OKUDA, 「A conversion and an application of an Industrial Waste,Scallop Shells,Yielded by an Aquaculture to Multifunctional Resources. Such as a Novel Remedy and a Wallmaterial」 , 12th International Biotechnology Symposium and Exhibition in Republic of Chile(2004.1).
25. 吉田朋央、小山信次、奥田愼一, 「ホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減効果に及ぼす焼成温度の影響」, 化学系協会東北大会(2005).
26. 小山信次,農林水産ジャーナル「ホタテ貝殻を有効利用した新しい機能性材料の開発と実用化」,28 (6) 2005.
27. 小山信次, 「ホタテ貝殻を有効利用した新しい機能性材料の開発と実用化」,農林水産研究ジャーナル,28 (6),p.38-42(2005).
28. 小山信次,浦井航,「ホタテ貝殻セラミックス」,高分子, 55巻,7月号(2006).
29. 吉田朋央,小山信次,奥田愼一「ホタテ貝殻のホルムアルデヒド軽減効果に及ばす焼成温度の影響」, 化学系学協会東北大会,(2005.9).
30. 小山信次,浦井航, 吉田朋央,笹谷廣治,「ホタテ貝殻セラミックスの機能を応用した製品開発」,"ファイバー" バイオミメティックス,NTS, p.287-290(2006).
31. 吉田朋央,小山信次,奥田愼一,「ホタテ貝殻によるホルムアルデヒド軽減機構」,日本化学会第86春季年会(2006.3).
32. 小山信次, 「ホタテ貝殻の有効利用について」, 生活と環境,Vol.6, No.11, p. 17-21(2006).
33. 小山信次,吉田朋央,浦井航,「ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品開発」,工業材料, Vol.55, No.3, p.81-83(2007).
34. 小山信次,「産学官共同研究−ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品開発」,財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団紀要,Vol. 11, p.9-12(2007).
35. 小山信次、ホタテ貝殻セラミックスの機能性を応用した製品の開発、粉体と工業、VOL 40, NO.1(2008).

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